←元気だった頃のヒリュくん
ハートランドヒリュというお馬さんが、昨日の朝の調教中に心臓マヒを起こして 倒れ、そのまま息を引き取ったそうです。彼は10歳の現役の競走馬です。JRA日本中央競馬会)のサラブレット最多出走記録(122戦)を更新中で、アラブも含めた新記録(129戦)を目前にしての突然の死でした。区切りの130戦で  引退した後は、京都競馬場で乗馬として余生を過ごすことまで、もう決まっていたそうです。彼を以前預かっていた清水久雄元調教師(2月一杯で勇退)、そして 現在の河内洋調教師。転厩した矢先の事故だったので、ご両者ともにとても複雑なご心境だと思います。今回の事は誰が悪いとかいう問題ではなく、本当に不慮の事故です。ただ、ヒリュくんの冥福を祈ります。
この仕事をしている上で、馬の『死』というのは避けては通れないものです。しかし、特にジョッキー(厩務員さんなどはまた別だと思います。)は、一頭の馬に特別に情を注ぐという事はなかなか出来ません。一つのレースである馬が怪我をして、そのまま薬殺しなければならない。でも、次のレースは待ってくれない。半時間もすれば、もう違う馬に乗ってレースに臨まなければなりません。そういう時に前の気持ちを引きずったままだと、レースに集中できず、周りに迷惑をかけてしまうかも知れません。迷惑ぐらいで済めばイイですが、事故を引き起こして、新たな犠牲者(馬)を出すことになるかも知れません。だから、俺は敢えてある特定の馬に情を注ぐということはしないように気を付けています。しかし、今まで今回と全く同じようにして死んだ馬を見たり、他にも何頭もの馬の最期を見てきて、決して ソレに慣れる事はありません。自分の無力さが悔しいことは多々あります。
「競馬」というスポーツは、人間が、走るためだけに作り出した芸術品=サラブレットを競い合わせるモノです。100%全てが人間のエゴです。 しかし、実際に『生』を受けた馬たちは、そんな事も知らず、そして、その競争で勝ち抜かなければ、ソレを繋いでいくことは出来ないのです。だから、人間たちは、彼らをちょっとでも長生きさせてあげよう=競争に勝たせてあげようとムチを振るうのです。そんな作り出された【矛盾】の中で、必死に生きようとする=ただひたすらに走る、一頭一頭の馬の姿が何よりも美しく輝いて見えるから、「競馬」はこんなにも多くの人たちを感動させることが出来るのだと思います。
日本では未だに「競馬」はギャンブルの面が大きくクローズアップされますが、諸外国では「KING OF SPORTS」(スポーツの王様)と呼ばれるぐらい権威のあるスポーツです。関係者はもちろん、ファンの人たちも『馬』一頭一頭を尊重して、彼らに接しています。これからもポニーさんやこのブログを通して、一人でも多くの人にそういう事を知ってもらえるよう頑張っていきたいと思います!!