特別版 8月〜9月(前編)
ようやく寒さが和らぎだしたのは、7月も終わりに近づいた頃。
さすがにこのままではダメだと思っていた時、ボスの奥さんに
「最近のアナタは何なの?まったく気合が入ってないじゃない。
ボスも私もアナタが来た時は、もっとデキる子だと思ったのょ!
ラストチャンスだと思って、もう一回やってみなさい!!」
と、渇を入れられる。それからまた他厩舎の調教に乗せてもらうようになった。しかし事はいきなり好転するはずもなく、一週間、二週間と時は過ぎ
(やっぱりアカンのかなぁ。。)
という想いが、また俺の心に広がり始めていた。
そんな時、レースを前日に控えた金曜日の朝、全く予想していなかった騎乗以来が舞い込んだ。

「明日、どこで乗るんだ?」
「どこでも乗らないょ。」
「じゃあ、ここ(トゥーンバ)で一頭ジョッキーが足りないから、乗らないか?」
「えっ!?」
「57㌔の馬なんだが、何㌔減量できる?」
「53.5㌔(2.5㌔減)でよかったら乗れるけど。。」
「ヨシッ、決まりだ!!」
「ありがとう!」

普通、レースに出る馬のジョッキーはレース2日前までに決まる。こんなに直前になって決まる事はあまりない。あまりに突然の事だったので、考える事もなく返事をしてしまったが、この週はもう騎乗がなさそうだったので、何も減量をしていなかったのに加え、週初めに馬に蹴られたため、まだ乗る時にかなり痛みが走るコトをすっかり忘れていた。
(体重、作れんのかなぁ…?)
などと色々考えながら、取りあえず出走表を見てみることにした。3歳のセン馬で1戦(出遅れ+15馬身差大敗)、休養明け初戦、外枠。
(やっぱりチャンス無さそうやなぁ。。)