特別版 8月〜9月(後編)
その夜、風呂に入り汗をかいた後、体重計に乗り、なんとか大丈夫そうなのを確認すると、急に
(明日の競馬、なんか良いんちゃうかなぁ。。)
という何の根拠もない、想いが頭に浮かんできた。そしてその想いは翌朝、また理由もなく更に強くなっていた。
レース前、調教師から「外枠だから無理せず後方から進めて、おしまいに掛けてくれ!」という指示を受ける。
ゲートが開くと好スタートをキメる。しかし、指示通りゆっくり回りの様子を見ながらレースを進める。4コーナーでは先頭を射程圏に入れて、まだ伸びそうな手ごたえ。
(勝てるッ!!)
直線、2番手に上がるも、先頭は余裕の手ごたえで突き放しにかかる。
(このまま2着を確保や!)
と思いながら必死に追うが残り50㍍の所でついに力尽き、1頭にかわされ3位で入線。
レース後、進路妨害の疑いで審議に掛けられ、結局4着になるも、調教師、オーナーは単勝21倍の馬の激走に大満足。
「次走もお前を乗せる。」
「お前は、ここら辺で勝っている見習いジョッキーより乗れる。もっと自信を持て!」
との言葉をもらう。
その言葉が本当なのか?という不安。それを信じたいという期待。そして、、、、付いてくる結果。この二週後には、同じ調教師の馬でトゥーンバ初勝利を上げる。人気のある馬での勝利ではあったが、自分を信じて乗って得た結果だった。
結局、これらの言葉がきっかけで、100%とはいかないまでもある程度の自信がついてきた。そして結果が伴ってくるに連れ、チャンスのある馬への騎乗以来も増え出し、また前のように、いや前よりももっと、レースが近づいてくるのが楽しみになった。


長らく続いた俺の「辛抱」の時は終わろうとしていた。